土曜日の朝、私は鎌倉の材木座海岸の砂浜で海を見ていました。少し沖合は、サーフィンやウィンドサーフィンに興じる人達であふれています。ちっくしょう、いい波じゃねえか……そこで泳ぐんじゃなければな。
いつかはロングのトライアスロンを目指す人にとって、長距離のオープンウォーター練習は必須です。なのでなんにも考えず、フツーのOWSイベントだと思って今回のラフウォータースイム・イン・鎌倉に申し込んでしまったのですが、ちと様子が違うようです。そういえばイベント名の頭に"ラフ"とついているよなー。辞書で調べてみると ROUGH【形】荒い、デコボコ とあります。つまり翻訳すれば『荒海で泳ぐイン鎌倉』ふあっ!(゜Д゜)
しくじった!つまりこいつは、普段からサーファーの集ってるような波がちと荒めの海で泳ぐのを楽しんじゃおうぜ!という趣向の、ちょっと上級者向けイベント。泳ぎの苦手な私にとって、サーファーの喜ぶような海で泳ぐことなど考えられません。即刻荷物をまとめて帰りたいところでしたが、いろんなところで明日は海で3キロ泳ぐんですわ!てへ、とか公言してしまっていた以上、そうもいかないしなぁ…。などと思い悩みながらふらふらしていると、初めてのトライアスロン部の吉村さんと長岡(LemonMaster)さんに出会ってしまいました。2人ともなんだか泳ぐ気満々です。うーん、一人だけ帰りますとも言えないなぁ。仕方ない、泳ぐかぁ。
今回のRWS in 鎌倉には初トラ部の人達がざっと10人ほどもエントリーしています。やっぱロングを目指すトライアスリートには3kmのOWS大会って手頃な練習になるからでしょうねぇ。コースは以下の通りで1.5kmを2周。100m毎にブイが立ってるのは分かりやすくてありがたいです。
とはいえスタート前の試泳タイムでも、波に押し戻されちゃってなかなか最初のブイまですら辿り着けません。マジかよ。前途多難すぎるぜ。
本番前の説明でも今日はそこそこ波が高いですだの、一番沖合の方がスゴくうねってますだのと、たいしたことでも無いようにさらりと言ってくれるのがこのイベントの性格をよく表しているようです。トライアスロンでもスイムはケツの方になってしまう泳力の私にとって、OWSイベントは場違い感が甚だしいんですよね〜。スイミング好きの人達が集まっているOWSでは、どうみても自分あたりは底辺ですから。せめてオフィシャルのみなさんに迷惑をかけないようにしなくては……とか考えていると、不安になって、泳ぎだしてもいないのに心拍数がバクバク上昇して仕方がありません。そのモチベーションだだ下がりっぷりは見事に外見にも現れていたようで、顔色の悪さを指摘されてしまったほどですョ。
それでもスタートはお構いなしにやってきます。一斉に砂浜からダッシュ……するのは1,2割で、さすがに様子を見ながら進む人が大部分。なにせ波がざっぱんざっぱんキテますから、胸の深さまで進むのも一苦労です。バトルが殆ど無いのはいいんですが、やっぱり第1ブイ(200m)がなかなか近づいてこない。なんとか辿り着いたと思っても、今度はかわりに6本のブイがずらりと遙か向こうまで並んでいるのが目に入ってきて、気分的にはもう既にこのあたりで萎え萎えです。
それでも湾をナナメに泳ぎだすとなんとかカラダも前に進みだして、ブイも順調に消化していけました。とてもうねってはいるんですけどね。水の透明度も実はそんなに悪くなくて、さすがに色々巻き上がってるんで見えにくいものの、前後左右にいる人は水中でなんとか確認できます。周囲を泳いでいる人はまばらになってきたけど、まあなんとか最後方の集団の中にはいるようです。確かに遠くに行くほどうねりは荒くなっていきますが、折り返しの750mブイのあたりで20分ちょいぐらい。あれ、意外になんとかなるんじゃね?なんて思ったものですが、これが間違いでした。どうも湾の潮の流れが左から右だったようで、今までは単に潮の流れに乗っていただけ。折り返しブイを回った途端にその潮の流れが逆に牙を剥いてきました。進まねーよ、オイ!
疲れて平泳ぎしようにも延々と顔に海水が覆い被さってくるんで休めやしないし、ひたすら腕を回してクロールするしかないんですが、しんどくて腕のかき方がどんどんイイ加減になってくるのが自分でもよくわかります。こういう状況になるとなおさら泳力の差が大きく出てくるんでしょうね。さっきまで周囲にいた人たちに少しづつ引き離されて、ますます周囲の人影がまばらになっていっちゃいます。寂しいっ!
泣きそうになりながらも必死で腕を回して、1周目のアップは47分半ぐらい。ここら辺の人達はもう亡者のような足取りで海から上がってくる人ばかりです。私も亡者のような足取りでチェックポイントを超えると、用意されていた水をガブ飲みし、さあどうしたもんかと海の方に振り返りました。一応なんとか溺れないで泳げることはわかったけれど、またあのザブンザブンの波の中に引き返すのはな〜。1周目でDNFでもいいじゃん。などという気持ちが頭をよぎりましたが、半分で終わっちゃうのもブログ的にどうよ!?と不思議な意地がわき上がり、気づけばゆーくりと再び波の飛び交う中に足を踏み出している自分がいました。もちろん、その後すぐに後悔したんですけどね。
2周目を泳ぎだしてすぐにわかったことは、あれ、なんだかさっきよりうねりが荒いぞ……。プルの手がたびたび宙をかいたり、いきなり頭上から水がふってきたり、いや、もう気が休まらないです。なんか花やしきのジェットコースターにずーっと乗っている感じで、ジリジリ何かが削られていくのがよく分かりました。それと、気がつけばまわりに泳いでる人が全然いない!後で聞いた話だと、1周目でリタイアした人もいたそうで、私の後ろにだーれもいなくなっちゃったんですね。泳いでいる人はいませんが、ボードに乗ったレスキューの人がいました。どうやら私にくっついて伴走しているようです。そりゃそうでしょうねー、他に見る相手がいないんだから。今にも回収しにきそうな心配そうな目でこっちを見ているもんだから、「大丈夫で〜す」と、こちらから声をかけたりしたんですが、口が半分沈みかかってるもんだから、伝わってるんだか伝わってないんだかよくわかりません。向こうからも何度か声が帰ってきましたが、あっちもなに言ってるかよくわからないし〜。
そして沖のすげーうねっているエリアへ。なんだかさっきより更にすげーうねっています。さっきまですぐ近くに見えていた大きなブイが、水面が盛り上がるとあっという間に見えなくなって、どっちに進んでいいのか簡単に方角を失っちゃいます。こうなると自分が波頭にきて再びブイが見えるようになるまで、じっと耐えてるしかないんですよねー。そんなんが十重二十重にやってくるんで、さすがにマジヤバイと思いました。漂流するってこんな感じなんだなぁ……と、ガンバがイカダにのって荒波を乗り越えるシーンを思い出しつつ、それでもめげずに頑張りましたよ。
ただ気になったのはブイをいくつか越えるごとに、なんだか周囲にいるレスキューさん達の数が増えてきたこと。『なんだ、要救助者がいるのか!』とか言って集まってきたのかと思って、相変わらず波に消え入りそうな声で『大丈夫ですよ〜』と返す私。マジでラストの泳者なのかしら>自分。後方のブイが自分が泳ぎ終わったハシから片付けられているんじゃないかと心配になりました(実際はこの後1.5kmと800mのレースがあるからそんなワケがない)。
最後のブイを回る頃にはすっかり周囲をレスキューさん達のボードに囲まれて、もはやすっかりひとり占め状態ですよ。そんな中をなんとか腰の深さまで泳ぎ切り、浜辺をダッシュする私。これで終わりだと思えば力も湧いてきます。颯爽と丘に上がろうとした直前に後ろから来た波に足をとられて見事にスッ転びましたが、それでも起き上がって笑顔でゴールいたしました!タイムは1時間37分。やー、遅い遅い!でも自分的には自分を褒めてあげたい気分でいっぱいです。ちなみに順位的にはブービーでした。あと1人後ろにいたんですね〜。
海の家でぐったりしていると、暫くして今度は1.5kmの部のスタートが近づいてきました。初トラ部からも2名プラス、さっき3kmの部に出たばかりの吉村さんが出場します。なんと荒海を3周ですよ!富士ヒルのことといい、なんか最近吉村さんどこまでいっちゃうんだかとっても心配です。
しかし陸の上から選手達がスタートしていく様を客観的に眺めていると、なかなかに酷い有様です。あんな波の中に飛び込んでいくなんて、全く物好きもいいところですよねー。でもまあ、さっきはあれに混じっていられたんだから、制限時間が90分もある佐渡国際トライアスロンBのスイム(2km)は、多少波があってもなんとかなるんじゃないかなーという気はしてきました。苦労した分収穫はあったかな。浜茶屋さんのバナナも美味だったしね。