東京でもトライアスロンというのは行われているってご存じでしょうか?ひとつはお台場の日本選手権。そしてもう一つは江戸前トライアスロン。羽田空港のそばにある城南島海浜公園で行われる大会です。この大会はスーパースプリント。つまりチョー短い距離で競われます。スイム350mにバイク12km、そしてランが2.5km。競技時間は1時間もかかりません。でもそれだけだとすぐに大会が終わっちゃうので、ここではトライアスロンの駅伝というのが開催されています。3種目それぞれを得意な人が受け持つリレーというのはよくあるんですけどね。駅伝はそうじゃなくて、スイム・バイク・ランを通しで一人でおこなって、次の選手にバトンタッチ。複数の選手(江戸前では3人)がそれぞれ3種目をこなしていく競技です。ここと浜松ぐらいしかやっているところを知りませんが、非常に珍しい競技ですね。
このたびリレー競技に微妙に燃える男、カミヤさんの音頭取りで、我らが初めてのトライアスロン部もこの駅伝競技に参加することになりました。しかも4チームも!(実は駅伝は参加総数が21チームなんで、なんと2割弱の占有率です)場所的に参加しやすいということもあるでしょうけど、こんな東京湾真ん中の海を泳ぎたいという人が12人も。しかも前日の九十九里トライアスロンから連チャンで参加という人も何人かいるんだからどうかしてますねー^^
朝に現地入りすると、普段はとてものどかな城南島の公園が、なんだかムキムキした人たちでウジャウジャ溢れかえっています。もっとのんびりとこぢんまりした大会かと思っていたのですが、おや、なんか違うぞ。距離が短いからって舐めていましたが、けっこうガチな雰囲気がひしひし伝わってきます。毎度ありがたい吉岡総監督のテント村でくつろいでいる私たちはむしろリゾート系の最右翼みたいな感じで、となりのテントでは…おいおい、ローラー台回している人がいるよ!大丈夫なんか?俺たち!
初トラの4チームはガチ・頑張る・ゆるゆる・女子with IRONMANと、なんとなく目標別?に区分けされているんですが、私の所属はなぜかガチチーム。1走はレースも練習もとにかく休まずやらずにいられない吉村さん、2走はどこか痛くてもとにかく毎週レースに出ちゃうョの吉岡さんと、泳ぎ続けないと死んじゃう黒マグロのようにガチな人たちだからいいんですが、3走の私はガチなどという言葉には縁のない人間ですから困っちゃいます。『シューズ履き替える時間が惜しいから、フラットペダルを買ってバイクとランはランシューで!』みたいな話を嬉々として楽しんでいるお二人さんを私は『吉々さん』と呼んでいますが、今回は私もなんとなく二人にあてられてフラットペダルを買ってしまったほどです。
でも実際参加者を見ると本気の人たちはフラットペダルを選択してますね。私はガッチリ踏めるようにMTB用の幅広のを買いましたが、みなさんもっと質実剛健なタイプのヤツにトゥークリップをつけています。それもかなりの割合で。分かってる人は分かってらっしゃるんですね。
まあそんなガチな皆さんに囲まれて今更ジタバタしても仕方がないので、我々はカミヤさんが持ってきたボディーステッカーで気分だけパワーアップ!ゼッケンのステッカーの他にも、ニコトラ(応援をしてくれた人に笑顔を返そうっていう呼びかけ)の一環で作ったTEAM HIGH FIVE(ハイタッチ)のステッカーをたくさん持ってきてくれたので、かなり気分はアゲアゲになりました。さらにバナーナとコークをたくさん持ってみんなの応援に来てくれた柴崎さんのおかげで、エネルギー的にもパワーアップ!バナーナは大事ですよ。
てなわけで気分の方は盛り上がったんですが、個人的にはヤバかったコトがひとつ。クルマからバイクを出して組み立ててみたところ、あれ?バイクを立ててみてもタイヤが直立したままだ。ハンドルに触ってみるとギシリと音がして、力を入れて傾けないと曲がらない。なにこれ、ヘッドセット(ハンドルの付け根)のとこが錆びた?慌ててネジを緩めてスプレーオイルをぶっかけてみましたが、なんとか動くようになったものの、なんかまだ動きが渋いなー。かなりにヘンな感じ。これはバイクは慎重にいかねばなりませんねー。
そんなこんなでバタバタしている間に、いよいよレースがスタートとなりました。といっても第3走者の私はこの時点ではまだ観客ですけどね。駅伝も一般のスーパースプリントに混じっての出走なので、いつも見慣れた激しいスタート争いが繰り広げられます。だけれどたった350mですからねー。あっという間に終わっちゃうんですよ。速い人は4分ちょっとでスイムアップしてしまうので、見てる側もけっこう慌ただしいです。スイムアップ地点までダッシュで移動して応援ですわ。トランジットも無駄な動きがなくて早い早い。佐渡のトランジットではゆっくりトイレに身支度を調えて、ういろうのどに詰まらせたりしてたのに、そんなのどかさはここには一切ありません。みなさん乗車線までバイクつかんでフルダッシュ。次から次へとスタートを切っていきます。一分一秒すら無駄にしない心構えを感じさせます。でもまあ、観客的にはようやくここで一息つける感じですかね。
バイクは城南島の公道を一部閉鎖して作った4キロのコースを3周。普段トレーラーやらも走っている道路なので轍もあるし、細かい直角ターンも多い複雑なコースです。オフィシャルの人やお巡りさんがいっぱい立っているのでミスコースの心配はありませんけどね。応援が一息つけるとは言っても、速い人だと20分そこそこで回ってきちゃいます。ランも速い人は10分切っちゃうでしょうから、下手すりゃあ第2走者にバトンタッチまであと30分そこらしかありません。それぞれのチームの2走、3走メンバーは慌てて再びスタート地点に大移動。でも戻ってきてみると、先程の喧噪はどこへやら、バトンタッチポイントは閑散として人影もまばらです。そりゃそうですわな。大部分の選手はもうここには用がないんですから。いるのは駅伝の選手と、少数のオフィシャルの人。それだけです。でも水上に目を移すと、そこにはスタート時とかわらない光景が残っていました。水泳をサポートするライフセイバー隊が、全体スタートの時と同じ人数で、ぷかぷか海の上で待機しているんです。おい…こりゃひょっとしてマンツーマンか?と噂していると、果たしてその通りでしたね。先頭のチームの選手がバトンタッチでスタートしていくと、それを追いかけてセイバーのボードが並走していきます。老若男女とりそろえた精鋭セイバー隊から、選手が出るたびに一人一人、おつきのライフセイバーさんが付き従っていくわけですよ。なんと贅沢な状況!どうせならおねーさんに当たるといいなぁ…などと、おぢさん臭いことを呟やかずにいられない人がちょこちょこ周囲に見受けられましたが、そこはそれぞれの普段の行いが試されるところでしょうね。
我らがガチチームも、1走の吉村さんから2走の吉岡さんにチェンジ。順位は中段ぐらいかな?短い距離の割には堪えた様子なのは、やっぱり息をつく暇もないからかもしれません。それでも41分半ぐらいで戻ってきたのはさすがですけどねー。ちなみにこのレース、ハードなことにスタートから1時間40分で第3走者が繰り上げスタートになります。つまり一人頭50分以内に走りきらないといけないということ。ここらへんでも基本的にガチなレースであるということが伺い知れると思います。
さーて、最後は私の番になるわけですが、ちょっと戸惑ったのが、はっきりスタート時間が決まってるわけではないので、アップをするタイミングがなかなか掴みづらいということ。とはいえスイム前には心拍上げときたいですしねー。最初はこまめにダッシュとかやっていたんですが、次走者のつもりで待っていると四十数分というのは意外に長くて、逆に疲れそうなんでやめてしまいました。んでじーっとしていたのですが、なんだか心拍が落ちない。なるほど駅伝だと始終気分的にドキドキしているんで、運動とは関係無く心拍があがっちゃってるんですね。これってアップいらなくね?なんて調子こいていると、向こうから緑の初トラスーツに身を包んだ吉岡さんがグングン近づいてきました。吉岡さんがこちらにタスキ(といっても足首の計測バンドですが)を渡すため、最後の力をふりしぼって全力疾走です。おお、これは滾るぞ!
元気よく言葉を交わしてバトンタッチ!私も勇んで東京湾に向かって走り出しました。でもね……舌の根も乾かないうちにで申し訳ないんですが、なんか一人だけで海に向かって走ってると、あっという間に別の感情がわき上がってきたんですよ。あれ……これってサビシくね???と。こういうシチュエーションは初めてですが、なんか休息に冷静になってしまった自分がいました。南の島の海ならともかく、東京湾に泳ぎ出すには、やっぱ多少の混乱と勢いが大切です。いや、城南島の水は思ったより全然綺麗だったんですけどね。それでもなんだか一人で棒倒しか騎馬戦始めるような心持ちで、ちっとも意気があがりません。争う相手はとりあえず周囲に見当たらず。道中一緒にいてくれるのはライフセイバーさんだけです。理解しました。なるほど、2走さんと3走さんは、まずこのレースっぽく無い雰囲気の中でモチベーションを上げていくという戦いをやっていかないといけないのですね。
とはいえ泳ぎやすいことはこの上ありません。湾内の堤防に囲まれた場所だから波も殆ど無いし、なによりバトルする相手がいないから自由にコースどりできます。モチロンぶつかることもはたかれることも、上に乗り上げられることも無いわけです。こりゃあのびのび泳げていいじゃ〜ん…と、にんまりしていると、ばこっ、突然なにかが手に当たる音がしました。痛ってェ!なんでこんなとこに固いモノがあるの?ジンジンする手の方に向かって顔を上げると、はたしてすぐそこに、かなり若めのライフセイバーのおにーちゃんの顔がありました。どうやら彼の乗るボードをぶっ叩いてしまったようです。セイバーさんはこちらを見下ろしながら冷静に一言『そっちじゃないです』。好き放題泳げるのをいいことに、なんだかとても自由すぎるコースどりをやってしまったんですかね?スンマセンと謝ろうとしたけれど、口が水の中なんでゴボゴボと泡しか出ません。仕方なくそのまま泳ぎ続けると、いくらも進まない間にまたしてもばこっと手がボードに…。『そっちじゃあありません』今度はおにーさんの声がなんだか憤っているように聞こえます。曲がりそうになっている私におにーさんが必要以上にボードを近づけてきているのか、はたまた私が執拗におにーさんのボードを殴りにいっているのか判断がつきませんでしたが、さすがに3度目の時には完全に声に怒りが入っていたような気が……(;´Д`)まあそれでも8分ちょっと泳ぎ続けて、ようやくスイムアップ出来たんですけどね。かなりドキドキしてしまいました。
お次はバイクパートです。大急ぎで準備をすませて、ラックからバイクを引っ掴んでダッシュ!あれー、やっぱりハンドルの動きが渋い。やはりこちらも応援にやって来てくれたトーマス石井さんが構えるカメラに手を振ろうとしたら、バイクがあさっての方向に進もうとしたんで危うくコケそうになっちゃいました。乗車線を越えて漕ぎ出してみれば、バンクすればカーブはちゃんと切れるんで、取り敢えずは一安心。だけどここでもやっぱり競争相手がいないから、ほぼ単独走です。モチベーションが上がらないったらないワケですが、さりとてあんまりダレてると順位が下がっちゃいますしね〜。実際速い人に一回ぶっこ抜かれましたが、周回コースなんで順位上で抜かれたのかどうかもよく分かりません。なんともモヤモヤしちゃうワケですよ。
それにコースどりがとにかく直角が多くて複雑。ハンドルのこともあるし、あんまり勢いつけてはコーナーに入る気にはなれません。ちゃんと減速してバンクを効かせてターンしてから、またすぐ加速ーをひたすら繰り返すわけですが、コーナー出口で踏み込んでいこうとしているウチに、そのうちガリッ……っと足元から音が…。あれ?ええっ?ひょっとして地面とペダル接触してる?体勢が乱れさることはなかったものの、どうやら必要以上にデカいMTBのペダルが、アスファルトの路面と接触してしまっているようです。と、考えている間にも、もう一回ガリリッと火花が。これはヤバイ!やっぱロードにMTBのペダルなんてつけるもんじゃありません。ちゃんと車体が垂直に戻ってから加速しないと、かなりに危険そうです。それにしてもかなりにフラストレーションが溜まる状況になってしまいました。ハンドルは気になるしコーナーの出口ですぐに漕げない。その上スピードは出せてない割に加減速が多いので、心拍もあがりっぱなし。へばっちゃって初トラ部の仲間とすれちがっても、ふぇぇ〜いとか力なく返事を返すことしか出来ません。終わってみれば27分以上かかっちゃいました。うーん、遅い。ガチなどと名乗っていいんでしょうか?
最後はラン。海浜公園内を廻るコースを1周するんですが、こちらもなんだかコースが複雑。そしてまたしても孤独です。出だしこそキロ4分を切るペースで飛ばせましたが、なんぞ?この海辺の公園を爽やかにジョギングしているようなシチュエーション?やっぱり競り合う相手がいないと怠け心が顔を出してきて、ぜんぜんペースが維持できません。応援も殆ど無いからどうやって気分を盛り上げたものか……なんて悩んでも、2.5キロだから考えている間に競技が終わっちゃいそうです。気持ちだけ焦って走っていると、はたと後方に人の気配がして振り返りました。見ると20秒ぐらい後方に、なんだか走っている選手がいます。さっきまで誰もいなかったのにいきなりそこに現れたということは、ひょっとしていいペースで追い上げられてる?見てる間にもぐんぐん迫ってくる感じです。ヤ・バ・イ!!さすがに頭のどこかでカチンとスイッチの入った音がしました。いきなりエンジン全開!あれ、こんな余力があったの?ってぐらいにペースアップはしたんですが、後ろの人のペースがよくわかりません。ちらと確認すると、近づいてはいないような、でもピッタリ食いつかれているようなー。なんにしても、さすがにこんな終盤で順位落としたら吉々さんたちに申し訳ないったらありません。カミサマ、競争相手がいないとモチベがあがらないなんて舐めたこと言ってスミマセんでした!必死で腕振って脚回していると、近づいてくる電波塔みたいな建物。あの脇のコーナーを抜けるとゴールゲートです。なんとかあそこまでなんとか頑張らないとー!!!ラストスパートをかけていると、コーナーのあたりに緑のユニフォームを着た人たちが何人か、こちらに手を振っているのが見えました。ゴール前の出迎えにきてくれた初トラの人たちです。もちろん吉々さんたちの姿も。横を通り過ぎると一緒に走りだしたんで、ああファミリーゴールをするのか!とは思ったんですが、なんか朗らかな走りっぷりの吉村さんと吉岡さん。でも後ろが気になってスピードが落とせない私!吉々さんたちも止まらない私に、怪訝そうな顔をしながらもペースアップ。おいおいおいおい!おおよそファミリーゴールとは思えない様相で、全力疾走でゴールイン!となってしまいました。勘弁してください。怖かったんですぅ(T_T)
そんなこんなで終わってみるとスプリントの半分強ぐらいのレースなのに、どっぷり疲れてしまいました。あまり息をいれる暇が無いからですかねぇ。それと、2走、3走はなんだか独特な孤独との戦いになります。私のように精神力が弱いと気持ちが萎え萎えになってしまいますから要注意です。コースが空いてるから気持ちイイってのは、まあ程度の問題ですね。でもみんなでワイワイやるエキデンは確実に面白いです。最後は初トラ調理部長、住吉さんの作ったスィーツをみんなでいただいてシメ。
大会後のお楽しみ抽選&じゃんけん大会ではアームカバーをいただいちゃいました。時間も開催場所もコンパクトなのに、なんだかたっぷり楽しめた半日でしたね。ーああ、駅伝までやっても、まだお昼ちょっと過ぎなんですよ。なんかとっても得した気分です^^
(写真提供:石井さん、Nanaさん、シホさん)