内海高校をあとにして、残りは21.0975kmのランを残すだけです。他の種目より得意なランだけに、本来なら俄然意気が上がるところなんですが、うーん、やっぱりなんだか左ひざが痛い。走れることは走れるんだけど、場所が場所だけに心配です。どうしたもんやら?
一応スイムとバイクが思ったよりいいタイムで上がれたんで、制限時間まではあと3時間半ほど残っています。 頑張って6時間半切りを目指そうかとも考えましたが、膝だけにこれ以上悪化して走れなくなったら完走もおぼつきません。考え直してスローダウンを選択しました。でもね、スローダウンを選択せざるを得なかったと言い換えた方が正しかったかもしれません。
高校を出て1kmほど走ると先程の南知多道路の側道に入るんですが、いや、バイクで走ってるときからチラチラ見えていたんですけどね。いきなりドカンときました。壁のような坂が!高速道路は山を削ったり高架を足したりして、なるべく急激なアップダウンがないように作られています。けれど側道にはそんな作業は行われていません。素のままの地形が残されています。あまり使わない道路に税金の無駄遣いは出来んわけですよ。ましてやそんなところを足で走る物好きなんておらんだろうと。そういう想定のもとで作られています。でも、IRONMAN70.3JAPANは設定をしてしまったわけですねー。血も涙もありません^^;
のこぎりの歯のような最初の上り坂を目にした途端、『うう゛ぁあぁ』と喉の奥から空気が漏れ出しました。こりゃあアカン!もうスローダウンどころではないですわ。こんなとこガンガン上ったら左ひざがどうなるのか?恐怖感が頭をよぎって、流石にウォーキングが混じりだしました。周囲を見回してもそれは同様みたいで。元気よく駆け上がっていく選手など希です。そして案の定、坂を上りきってみると、そこには次の急激なアップダウンが待ち構えていました。しかも基本的はかなりの上り基調です。きっとこの後も延々と続いているんでしょう。こんなペースだと時間が間に合わないんじゃね?気持ちだけは焦るけれど、どうともなりません。
そうこうするうちに最初のエイドが目に入ってきました。最初は21kmで10コもエイドがあるなんて多すぎじゃないの?と思っていましたが、こうなってみると有り難いです。コールドスプレーを借りて左ひざに吹きかけ(全てのエイドには救護所が用意されています)、水をたっぷり含んだスポンジをもらってトライスーツの襟の後ろに突っ込んで、それでも足りずにコップの水を頭っからぶっかけました。相変わらず曇っていましたが、体感気温はずいぶん上がっています。そうしてまた走り出しましたが、こりゃキッツイ。間違いなく、本日の心が折れちゃうかも大賞があるとしたらこの辺でしたね。
ギザギザの上り基調は小一時間も続いたでしょうか。それでもようやく南知多道路の側道から離れ、もうひとふたやま越えて、コースはようやく下りが中心になってきました。丘陵地帯を緩やかに下っていくルートはとても走りやすいです。遠くには渥美湾や、ちらちら空港のシルエットらしき物も見えてくるようになりました。そしてここにきてなにより嬉しかったのが、再びギャラリーが増えてきたことです。畑や民家の間を縫っていくコースでは、みなさん仕事の手を休めたり、家の前に出てきて、手を振って声をかけてくれます。がぜん元気がでちゃいますね!
中には畑の一角にみんなで集まって鳴り物で応援してくれているおばあちゃん達もいて、ぴょんと跳んで応援に応えたら、『あら、あの人あたし達の応援にビックリして跳び上がったんじゃない?』なんて盛り上がっていたので、『あはははは、違いま〜す。大丈夫で〜す!』と笑って返すと、向こうでもひとしきり大笑いして、『がんばんなさいよ〜!』とみんなで返してくれました。むこうも応援を楽しんでもらえているのがわかると、こちらも返す言葉に力が入っちゃいます^^
ほぼ2キロぐらい毎にあるエイドステーションではそのつど左ひざにスプレーを吹きかけ、水のスポンジを替えながら、淡々と走り続けると、コースはだんだんフラットになってきました。このスポンジを襟に挟むのはどこかのブログに書いてあったんですが、今回とても助かりましたねー。6時間以上も運動続けていると、なんかもう気温と無関係に身体が火照り続けてどうにもなりません。頭がぼ〜っとなりそうになるのも、背中がひんやりしているおかげでかなり緩和されます。
そしていよいよ海へ出ました。セントレアがすぐ近くに見える海岸線に沿って、堤防の上を北上するコースです。ようやく戻ってきて気分が盛り上がってきたのと、それからこのままだと7時間切りが危ない気がしたので、元気を出して多少ペースアップ!ここまでこればヒザもなんとかもつでしょう。
ここでもたくさんの応援の人達が待っていてくれました。初トラ部のカミヤさんがFBで前に、応援の人には笑顔を返すようにしよう!と呼びかけていましたが、シンドイと笑顔も引きつっちゃうかもしれない、そもそも笑顔を作れるかどうかもわからないので、私はとにかく『ありがとうございます!』と返事を返すことを心がけています。応援のみなさんにもオフィシャルで頑張ってくれている人達にも、交通整理をやってくれたお巡りさんや駐車監視員の方々にも。何百回ありがとう!と言ったことかわかりません。つまりは今回それだけのたくさんの人達に応援してもらって、力を貸して貰ってたということです。子供達は元気な声で!おじいさんおばあさんは小さな声しか出なくても精一杯、1600人からが通るたびに声援を投げてくれているかと思うと、ほんと感謝の気持ちでいっぱいになります。脚は痛いけど、なんとかゴールの近くまでやってきた高揚感もあいまって、なんだか目頭が熱くなってきました。歳をとると涙腺が弱くなるんですよ。『あとちょっとだよ〜!頑張って〜!』なんて大きな声をかけられると、おいおいやめろや、うるうるきてしまうやないかい!と、なぜか関西弁で感動して涙をちょちょぎらせてしまうほどでした。バイクのコースにいたジャック・スパロウも、わざわざ海辺まで戻って私たちを出迎えてくれましたよ。やっぱ船長は海が似合いますよね。
途中何度かあった脚にツラい階段なんかも乗り越えて、ようやくコースは堤防を離れてゴールであるNPTマリーナりんくうへ、最後のスパートを迎えます。応援の人が口にする残り距離がバラバラなのは愛嬌ですが、ここまでくればもう完走は間違いありません。でも、残り1キロ地点で、それは突然起こりました。
ぴー。唐突に響く電子音。腕にはめたスントを見ると、『バッテリーがもうないです(英語)』。へ?一昨年の秋から毎日酷使し続けているAmbit2S。もう退色して何色だかわからなくなっちゃってるAmbit2S。ここまで頑張ってくれたのに、最近劣化が著しいバッテリーは、ゴールまでぎりぎりもたなかったようです。それにしても後1キロでかよ>< 俺がもうあと10分速くゴールできていればお前も一緒にゴールできたのに!なんて泣きそうになっていると、『ここまでのデータはセーブしてやるよ。心配すんな(意訳)』とメッセージを残して、スントさんは静かにデータの収集をやめ、ただの腕時計になってしまいました。スントさんもありがとう!おかげで安心して走り続けることができたよ!あとは任せろ!
そしてゴールへ。マリーナの中にこさえられた華やかなゴールゲートの手前には、コース沿いに選手を出迎えるたくさんの人達が待っていました。そしてゴールの手前ではあの外人さん?近づいてくる選手の名前をひとつひとつ読み上げてくれています。そしてとうとう私の名前も!残っていたスポンジの水を頭の上で絞り尽くし、両手を突き上げてゴールしました。時間は6:52:26。ランのタイムは2:24:35と非常に不本意ですが、それでもなにより完走です。2年前にはスプリントのスイムアップで吐きそうになっていた自分が、よくぞここまでこれたもんです。
ゴールエリアをくぐると、平尾さんや森本さん、吉村さん、マークさん、初トラ部の部長であるモータージャーナリストの河口まなぶさん、あと残念ながらバイクの関門に引っかかっちゃった松崎さんもいて、お互い健闘を称えあいました。ここらへんの5人はほんと速いです。みんな6時間切っちゃってますね。ちょっと遅れて関口さんや河西さんもゴールイン。みんなへとへとだけどいい笑顔です。というか、周りの人もみんな笑顔が弾けてます。ゴール会場の雰囲気はいつもいいものですが。今回は格別でした!
バイクのピックアップ、カンガルー自転車イベント便でのバイクの発送を済ませ、夜7時頃からは空港のイベント広場でアワードパーティーです。みんなでホテルからずるずると重い足を引きずって歩いていると、前方に今回83才でこのレースに参加した稲田弘さんの姿が!後ろ姿も背筋からビシッとして、非常にカッコいいです。こちらは動く歩道なんかつかっているのに、上りスロープをすたすた歩いて上がっていっちゃいます。凄いなー。あんな風に歳をとりたいものですねぇ。頑張らなくちゃ。
さて競技の関係はとてもスムーズだったのですが、アワードパーティーはちょっと?でしたね。参加者のテーブルはともかく椅子が全然足りず。そこそこ早めに会場入りした私たちも、ギリギリ椅子席を確保できたぐらいでした。そしてなにより再びあの行列が復活しちゃっています。ドリンクや料理は無料で提供されるんですが、それを受け取るために長蛇の列です。レースはあそこまで完ぺきにオーガナイズできるんですから、ここら辺はもうちょっと頑張って欲しいですねー。それでもウチのメンバーは逞しくて、人だかりの中に飛び込んでいったかと思うと鬼のような量の料理をゲットして帰ってきましたけど。
大半の面子はノンアルコールだけど祝杯をあげ、ぺこぺこだった腹を膨らましていると、ようやくアワードパーティーが開催されました。派手な音楽にのって、次々とレース中にとられた写真が会場のスクリーンに映し出されていきます。そしてここでサプライズ。なんと私のゴールシーンが、一瞬でしたがスクリーンに大写しにされたんです。いやぁ、いい思い出になりました。
その後飛行機がある私は皆さんを残して一足先に帰路につきましたが、実は出発ロビーからもアワードパーティーの音がよく聞こえてきました。喧噪を聞きながらロビーの椅子に腰掛けてこの2日間を振り返ると、実にたくさんの感動と経験と、そしてほんのちょっぴりの自信をもらうことが出来た気がします。ほんと、夢のようでした。あんまり夢のようすぎて、飛行機のシートに腰をかけた途端に爆睡し、飛行機が全然飛ばないうちに羽田に到着してしまっていたのはここだけのヒミツです。
次は館山わかしおトライアスロン。もう3回目になる私のトライアスロンデビューの地ですが、果たして成長を確認することができるか?ちょっとだけ楽しみになってきました。
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