6月14日の午前5時、私は第12回Mt.富士ヒルクライムに参加する初めてのトライアスロン部の人達と待ち合わせするため、道の駅富士吉田の駐車場に立っていました。なんで立っているのかというと、もちろん参加するために決まってるんですけどね。そういうことでなく、先週IRONMAN70.3JAPANであんなに辛い目にあったのに、もう暫くは坂のあるコースなんてこりごりだと思っていたのに、なんでよりにもよってその翌週にこんなところに立っているのか?ということです。自転車乗りとして成長したからでしょうか?それとも単に感覚が麻痺してしまったからでしょうか?多分後者でしょうねー。
今回ご一緒した初トラ部の吉村さんもご同様にセントレアからの連チャン組なんですが、吉村さんはウルトラマラソンにも出るような人で、私と違って体力的に坂ぐらいでこりごりしたりしないタイプの人なんでやる気満々です。今回4回目の富士ヒル挑戦になる望月さんも、念願の2時間切りを目指してモチベーション高めてきているようです。対する私はというと……写真見るとなんかニヤニヤしていますね。やっぱり色々と麻痺をしているようです。
道の駅から望月さんの富士ヒル仲間と一緒に、バイクでスタート会場である富士北麓公園を目指します。この道すがらが既に上り坂なんで、私のような輩は最初に後悔を始めたりします。『スタート前からこんなにシンドイのに、本当に今日やっていけるの?』などとは去年もブツブツ言ったおぼえがありますが、今年はさらに小雨まじりです。天気予報を見ると一日中降ったり止んだりで、ちょうど登る時間のあたりは雨マークなんですよね。でも会場に足を踏み入れると、そこはそんな予報をものともしないサイクリスト達で溢れかえっていました。後の報道では7,787人の自転車バカ愛好家の皆さんが集まったそうです。世界でも有数の規模を誇るイベントに成長しちゃったんですねぇ。
富士ヒルは競技時間の関係上、6時10分までにはゴールである5合目に運び上げて貰う荷物をケージの中に預けなければなりません。何の荷物を預けるかというと、主に防寒具、そして一部の人はホイールなんかですね。なぜかというと5合目は麓に比べて10℃近く気温が低いのと、帰りは長大な下りのために風で体温が奪われてしまうので、その準備が必要なこと。そして下りでブレーキをかけまくると、カーボンホイールはブレーキが当たるところが熱で溶けちゃったりする可能性があるので、それが心配な人が上で履き替えるためのホイールを運び上げてもらうんです。何を意味するかというと、上りはずーっとアップだけで、下りはずーっとダウンだけっちゅうことですね。富士山のコースは皆さんもご存じの、あのなだらかな稜線の通りです。激坂は無い代わりに、ひたすら上り続けるという真綿で首を絞められるようなコース設定ですわ。スタートとゴールの標高差は1,255mにのぼります。それがほぼそのまま累積獲得標高になるんですね。全長は24km。これを黙々と上ります。
とにかく凄い数の自転車ですから、ラックなんて用意できないんです。スタート会場には七千台の自転車が横倒しになっている光景が広がります。んでもって人に至っては八千人を越えるので、さっき『また後でねー』と別れた吉村さんも望月さんも探しても見つかりません。初トラ部では他にも何人か参加しているらしいのですが、捜索は全く不可能です。長いトイレの列に並んでいる間に最初のウェーブのスタートが始まり、続々と選手がスタートを切りだしました。けどなんといっても7,787人ですからねぇ。簡単には終わらんのですよ。私のウェーブは第14ウェーブ。スタートは最初の選手が出て行ってから実に65分後です(最終は第15ウェーブ)。それでもね、走り出したコース上はバイクでいっぱいでした。前も後ろもみっしりで、自由にライン取りなんてできません。速いタイムを狙いたい場合は、速めの申告タイムを申請してよいスタート順を確保した方がよさそうです(スタート順は申告タイムがはやい順になっているようです)。
レースの計測は胎内交差点を曲がってスバルラインに入ってからです。第14ウェーブともなると、ここからブワッとペースが上がることはないですね。この辺は概ね2時間以上のタイム申告の人が多いので、えっちらおっちらと上っていきます。料金所を過ぎるといよいよ本格的に上りに入っていくんですが、私は今回どうにか1時間40分台にいれたいなぁと思っていたので、ここらへんからなんとか集団をさばいて前へ。それでも5キロ地点通過は25分ぐらいですかね。今回ネットで目指せブロンズの人のタイムシートがあったんで、どれほど道中違うものなのかとそのまま数字をパクってもってきたのですが、この時点で既に異次元です。5キロばっかで6分遅れとか!ちなみに1:45ペースの人の表からも既に2分遅れです。うーん、ヤバイ。追い上げなくちゃ。
とは言ってもホントにたらたら坂が続くんで、逆に言うと頑張りどころが見つけにくいコースですね。最後の方に斜度のゆるい追い込みどころはありますが、少なくとも21km越えるぐらいまでは淡々と上るしかないんですよ。なんで去年追い込めなかった最後の部分で立ちこぎでもキメようと、今回は21kmまでは完全シッティングで脚の温存策に徹する作戦をたてました。なぜならラストで追い込むとカッコいいからです。なので、なおさらペースは淡々。けれどそのおかげか、前回は序盤で張り切って立ちこぎしたりして脚を使い切ってしまいましたが、今回は中盤若干のペースアップが出来ました。心配していた雨も一向に降ってくる気配はないし、ここまでは順調といったところ。
そういえば今回も痛車の方々がいっぱいいらっしゃいましたが、去年よりグレードアップしていたのは、みなさんスピーカーを標準装備していたことです。大抵の痛車の人は速いので、音楽をかき鳴らしながら抜いていきます。一般ライダーはシンドイんで殆ど押し黙って自転車こいでますから、その音楽の目立つこと。イラスト入りのディスクホイールもそうですが、キャラクター愛のためには重量増を全くものともしないようです。3合目手前あたりではママチャリに初音ミクコスプレで有名なキクミミさんも大外からぶっちぎっていきました。弄ってあるママチャリですが、ブロンズちゃんととっちゃいますからねー。スゴイです。
そして4合目を越えていよいよ本日の頑張りどころへ。1:45のシートに3分遅れぐらいなので、充分目標タイムを狙っていけそうです。ようやく腰を上げて加速体制に移ろうとしたところで、でもそれは突然やってきました!両ケツというか脚の付け根というか、その辺が突然ピキーンと攣るように。しかもケツがサドルに当たるとズキンと痛みが走ります。これはきっちり力入れたら完全に攣っちゃいそうです。はてなんだこりゃ?何度か坂練はやったけど、こんなところに痛みがでた記憶はありません。知らず知らずのうちにヘンなフォームでサドルにケツをぶつけてたのか?それともずっと同じ体勢で漕いでたのが悪かったのでしょうか?仕方ないのでサドルからケツを浮かせつつ、さりとてさして踏み込んでいないという中途半端な漕ぎ方のまま、勝負所も通過。カッコ良く立ちこぎすることも全然ないままにゴールに到着してしまいました。ガーミンのスイッチを押そうとしたら、あれ、なんか右手も痺れてて上手く押せない。なんとか左手で停止ボタンを押せましたけど、なんですかね、やっぱ1,255mは厳しいです。タイム的にはヤビツ×2なんてよく言われる富士ヒルですが、感覚的にはそれ以上ですねー。タイムは1時間52分29秒。40分台は無理でしたー。
ゴールの5合目では既に到着していた吉村さん、望月さん、それからやはりこのレースに参加していた初トラ部の宮腰さんと合流。私を含めてみんな自己ベストは更新したようで、特に吉村さんはブロンズ(一時間半以内)まであと5分と、さすがにエンジンが違う…と感心していたら、吉村さんがポロリととんでもないことを言い出しました。『最近ふつうのトレーニングじゃ満足できなくなっていて、実は今日はこれが終わったあとに今度はランで上ってみようかと思っていたんだけどー…』などと。いやいやいやいや!ナニ言ってるんですかアナタ。尻が痛いから動けませんでしたけどね、気分的には3メーターぐらい後ろに跳びのきましたよ。他の皆さんもドン引きです。なんなんでしょうねーこのタフネスおばけさんは?
去年の富士ヒルは晴天で5合目もソフトクリームが食べたくなるほどの暑さだったのですが、曇っているだけでこうも違うのか、今年はかなりの肌寒さです。雲も下がってきて留まっていてもいいことがなさそうなので、早々に5合目を引き上げることにしました。富士ヒルの下りはスタート同様、何回かの集団に別れて一辺におりていく形式をとってます。下りを好き勝手に下ろさせたりしたら、なにせ7千人超ですからねー。大変な混乱になることは目に見えていますから。ダラダラの下りというのがまた侮れなくて、殆ど漕がなくてもスピードは軽く60キロを超えてちゃいます。非常に危ないんで、秩序が大切なんです。私なんかビビりなんで、ひたすらブレーキ握りっぱなしです。
それに加えて今年は寒い!一応冬用のウェアをもってきたんですが、それでも身震えするほどです。スピードがスピードだけに体感温度が違うんですね。かてて加えて今回はケツが痛いためにサドルにのれないというハンデ付きなので、下りだというのに前乗りですよ!ますますスピードが出ちゃう。あんまり寒いんで途中の駐車場で中休みしたりウェアの中にタオルやパンフレットを詰め込んで凌ぎましたが、なんか途中ウトウトしちゃうほどでしたよ。雪山の遭難者じゃないんだから…。次からは新聞紙とかもってった方がいいかもしれませんね。寒さに身が固まっちゃったのか、なんでもないところで落車してる人なんかも見かけました。とにかく、シビアさでは競技後の方が遥かに上なんですよ、このレース。参加するなら軽量ホイールやらなんやらを手に入れる前に、良いブレーキを手に入れるべきです。じゃないと危ないし、ブレーキ握る指もとんでもなく疲れます。
その後北麓公園で振る舞われる吉田うどんを食べてから、なんとか痛いケツを引きずりながら道の駅富士吉田まで自転車を漕ぎ漕ぎしましたが、そのしんどかったこと。べつに擦り傷になっているわけではなさそうです。初トラ部のカミヤさんに教えてもらった皮膚保護クリームのガーニーグーをセントレアから使っているんですが、これが凄くいい。ベタベタしないのに、しっかり保護してくれます。私見ですが保護性能はボルダー(旧ディクトン)よりも上じゃないかな。今回もバッチリです。むしろズキズキ痛んでるのは表面じゃなくて奥の方なので、やっぱサドルに変に押しつけちゃって血行が止まっちゃってたりしたんですかねぇ。たかだか1200m上ったぐらいでフォームを崩してこれでは情けない。まだまだ修行が足りません。
それにしても最近バイクでダメージを受けることが多いなぁ。なにかしら対策しないと(汗)
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